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超合金とは?


現在,化石燃料の有効利用,CO2排出削減による地球温暖化防止などの観点から, 発電用ガスタービンやジェットエンジンなどの高温機器の熱効率向上がますます重要な課題となっている. その解決のカギとなるのが1000℃を越えるような超高温でも強度,耐酸化.耐腐食性などに優れた性能を発揮する超耐熱合金(Superalloy)である.

超耐熱合金は単に超合金とも呼ばれ,Ni(ニッケル)基,Fe(鉄)基,Co(コバルト)基などがある. なかでも高温強度の点で最も優れ,現在主流となっているのがNi基超合金である. 特にジェットエンジンやガスタービンの動翼,静翼,タービンディスクなどの材料として, 金属間化合物やセラミックスなど,ほかの耐熱材料の追随を許さない優れた合金である.


金材研では,耐用温度1100℃のニッケル基超合金開発を目標に研究を進めている.

材料設計には,データベースと実験式を用いた経験的手法から,統計熱力学計算などを用いた原子レベルの理論的方法まで,いろいろなレベルの計算法を用いている.これらにより,ミクロ組織や特性の予測,シミュレーションなどを行い,最適組成の探索を行っている.

計算で予測される最適組成の合金を,溶融状態の一端から徐々に凝固させる方法で単結晶化し,ミクロ組織や高温特性を解析評価している.組織の解析には,アトムプローブ電界イオン顕微鏡によるナノレベルの原子配置解析,電子顕微鏡によるミクロレベルの組織解析,高温X線回折計による結晶構造解析などを用いている.

写真は,電子顕微鏡で観察した単結晶超合金のミクロ組織である.

規則相,すなわち合金原子が規則配置した部分が,単結晶構造を保ったまま立方体状に生成する.この規則相の組成,量比,形状,配列度,生地の合金相との界面でのわずかな結晶歪みなどを最適に材料設計することにより,耐用温度を向上させることが可能である.

耐用温度は,タービン翼の使用条件を模擬したクリープ試験により評価している. 例えば,温度1100℃,応力137MPa(14kgf/mm2)などの試験条件で生じるクリープ現象を解析し,耐用温度を求めている. 現在,実験室レベルでは耐用温度1075℃クラスの合金を得ており,さらに目標の耐用温度1100℃を達成すべく研究を行っている.

ニッケル基単結晶超合金のミクロ組織

ニッケル基単結晶超合金のミクロ組織


(工業材料 1998年7月,1999年1月号より抜粋)

金属材料技術研究所と無機材質研究所は2001年4月1日をもって統合し“独立行政法人物質・材料研究機構”となりました。


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YOKOKAWA.Tadaharu@nims.go.jp
Last modified: Thu Oct 18 19:28:10 JST 2001